これから建設現場で働こうと思っている場合、玉掛けに関する次のような悩みや疑問を抱える人も多いのではないでしょうか。
「玉掛けできたほうがいい?」
「玉掛けってどんなことをするの?」
この記事では、以上のように考えている人のために玉掛けの作業手順や合図、資格について詳しく解説します。玉掛けに興味がある場合は、ぜひ参考にしてください。
玉掛けとは
玉掛けとは、工場や建設現場にてクレーンで荷物を移動する際にフックの付け外しをする作業です。
現場ではクレーンを使って重量物を高所に持ち上げるため、玉掛けで取り付けたフックが外れたり、フックの位置が間違っていたりすると大きな事故につながります。
危険を伴う作業であるため、玉掛けを担当するためには資格が必要です。
玉掛けの由来
玉掛けの由来として有力な説は、掛け軸を掛ける作業に似ているというものです。掛け軸には琥珀(こはく)や瑪瑙(めのう)といった宝玉が使われています。
宝玉が施された掛け軸を掛ける作業から発想を得て、玉掛けと呼ばれるようになったのです。
玉掛けの作業手順
玉掛けの作業手順は次のとおりです。
- 玉掛けをする
- クレーンを呼ぶ
- バランスを確認する
- クレーンで吊り荷を持ち上げる合図をする
- 介錯ロープで誘導しながら吊り荷を移動する
- 吊り荷を定位置に下ろす
各手順ごとに分かりやすく解説します。
吊り荷にロープやスリングを掛けて、玉掛けを行います。吊り荷を移動する途中で落下したり、ロープが切れたりしないようにすることが大切です。そのためにも、重心や荷重を計算して、適切な掛け方で玉掛けを行います。
玉掛けを終えて吊り荷を移動する準備が整ったら、クレーンを呼びます。玉掛けの担当者がクレーンを誘導して、吊り荷の重心の真上にクレーンが来るようにします。
クレーンのフックに吊り荷を取り付け、ロープのねじれや緩み、損傷がないことも確認しましょう。その後は吊り荷を少し持ち上げ、地切り段階で吊り荷のバランスを確認します。地切りとは、荷物が地面を少し離れた状態です。
地切りでバランスを確認した後は、吊り荷をさらに持ち上げるように、クレーンのオペレーターに合図を送ります。
吊り荷を巻き上げて持ち上げたり、横方向に移動したりする場合は、解釈ロープで誘導します。そうすることで、吊り荷が障害物と接触するのを防げます。
吊り荷を定位置まで移動させたら、クレーンのオペレーターに巻き下げるように合図を送ります。吊り荷を下ろし終えたら、荷物を解いて玉掛けを終えます。
玉掛けの方法
玉掛けには、大きく分けると次の2パターンの方法があります。
- フックにかける場合
- 吊り荷にかける場合
各パターンについて簡潔に説明します。
フックにかける場合
フックをかける場合は、主に次の4つの掛け方があります。
- 目掛け
- 半掛け
- あだ巻き掛け
- 肩掛け
以上のなかで最も良く使われる方法は、「目掛け」です。
目掛けはフックにワイヤロープのアイを掛ける方法です。
ワイヤロープを1本利用する場合は「1本づり」、2本の利用であれば「2本づり」です。さらに本数が増えると、3本づりや4本づりと呼ばれます。
吊り荷にかける場合
フックを吊り荷に掛ける場合は、次の方法があります。
- 目掛け
- 半掛け
- 目通し
- あだ巻き掛け
以上のなかでよく使われるのは、半掛けです。半掛けは、ワイヤロープを荷物に回して掛ける方法で、シンプルな掛け方なので扱いやすい点が特徴です。
しかし吊り荷が大きくなり、吊り角度が広くなると吊り荷に回したワイヤーが中心に寄ってしまい危険です。そのため吊り荷が大きい場合は、ワイヤー同士が中心に寄らないように工夫する必要があります。
玉掛け合図の種類
玉掛け合図には次の種類があります。
- 手を使った合図
- 笛を使った合図
- 旗を使った合図
- 無線を使った合図
それぞれの合図について解説します。
手を使った合図
手を使って合図を行う場合、決められた方法を確実に行い、クレーンのオペレーターに意思を伝えることが大切です。さらにクレーンのオペ―レーターは、その指示に従う必要があります。手を使った場合、次のような合図があります。
- 呼出し:片手を高く上げる。
- 位置の指示:なるべく近くの場所に行き指で示す。
- 巻上げ:手でももの上をたたいた後、 片手を上げて輪を描く。
- 巻下げ:手でももの上をたたいた後、 腕をほぼ水平に上げ手のひらを下にして下方に振る。
- 補巻上げ:手で上腕部をたたいた後、 片手を上げて輪を描く。
- 補巻下げ:手で上腕部をたたいた後、 腕をほぼ水平に上げ、 手のひらを下にして下方に振る。
- ジブ上げ:こぶしを頭の上にのせた後、 親指を上にし他の指は握り、 水平より上方に突き上げる。
- ジブ上げ:こぶしを頭の上にのせた後、 親指を下にし他の指は握り、 水平より下方に突き下げる。
- 水平移動:腕を見やすい位置に伸ばし、 手のひらを移動する方向に向け数回動かす。
- 微動:先ず両手で間隔を指示した後、 巻上げ又は巻下げる。
- 転倒: 両手を平行に延ばして, 転倒の方向にまわす。
- ジブの伸縮: こぶしを頭の上にのせた後、 伸ばすときは、 親指を上にし、 他の指を握り、 水平より斜め上方に突き上げる。縮めるときは、 親指を下にし、 他の指は握り、 水平より斜め下方に突き下げる。
- 停止:節度をつけて手のひらを高く上げる。 ただし、 微動の場合はそのままで指を握りしめてもよい。
- 急停止:手をひろげて高く上げ、 激しく左右に大きく振る。
- 作業完了:挙手の礼、 又は両手を頭の上に交差させる。
笛を使った合図
笛を使って合図をする場合は、笛を鳴らす間隔などに違いをつけてオペレーターに合図を送ります。
しかし笛を使った合図は聞き間違うリスクがあるため、笛のみで合図を送ることは禁止されています。そのため、手を使った合図の補助として利用されることが多いのです。次のタイプがあります。
- 呼び出し:長く一声
- 巻き上げ:短く間を置いて二声
- 巻き下げ:短く間を置いて三声
- 微動:指示前に短く一声
- 停止:少々長めに強く一声
- 急停止:短く連続的に
旗を使った合図
旗を使った合図は笛や手を使った合図ではわかりづらい場合に使用されます。たとえば造船所などで、クレーンのオペレーターと合図者の距離が離れている場合に利用されることが多いようです。次のような合図があります。
- 呼出し:手旗を高く上げる
- 位置の指示:なるべく近くの場所に行き旗で示す
- 巻上げ:手旗を上に上げて輪を描く
- 巻下げ:手旗をほぼ水平にして左右に振る。
- ジブ上げ:手旗を頭部に乗せ、次に手旗を上方に突き上げる。
- ジブ下げ:手旗を頭部に乗せ、次に手旗を下方に突き下げる。
- 水平移動:片手を移動の方向に水平に出し、 手旗を上にあげ移動の方向に振る。
- 微動:手旗と手で微動の距離を示した後、 巻上げ、 巻下げの場合にはそれぞれの合図を、 水平移動の場合には手旗だけの合図をつづける。
- 転倒:手旗と手を平行に出して転倒の方向に回す。
- 停止: 節度をつけて手旗を斜め上方に高く上げる。
- 急停止:手旗と手を高く上げて激しく左右に大きく振る。
- 作業完了:挙手の礼をする。
無線を使った合図
無線を使って声で相手に合図を送る方法もあります。広さや高さのある建設現場で利用されることが多く、トランシーバーが使われることもあります。次のような合図があります。
- 巻き上げ:(コ)ゴーヘイ
- 巻き下げ:(コ)スラー
- ジブ上げ:オヤゴーヘイ
- ジブ下げ:オヤスラー
- 少し移動:チョイ、チョイチョイ
- 伸縮:伸ばし(縮め)
玉掛け関連の資格
玉掛け関連の資格には、「玉掛け特別教育」と「玉掛け技能講習」があります。それぞれについて解説します。
玉掛け特別教育
1t未満の吊り荷を扱う場合は、「玉掛け特別教育」の受講が推奨されています。推奨なので、義務ではありませんが、取得していないと玉掛け作業者として採用されないこともあるので、取得しておくとよいでしょう。
玉掛け技能講習
荷重1t以上の吊り荷を扱う場合は、「玉掛け技能講習」を受ける必要があります。AコースとBコースの2種類があり、Bコースを受けられるのは下記の資格を所持している人です。
- 移動式クレーン運転士免許
- クレーン・デリック運転士免許(旧クレーン運転士免許、旧デリック運転士免許含む)
- 揚荷装置運転士免許
- 床上操作式クレーン運転技能講習修了者
- 小型移動式クレーン運転技能講習修了者
玉掛け取得にチャレンジしてみよう
多くの工事現場では、玉掛け作業がつきものなので、資格を取得していると重宝します。今回は、玉掛けの方法についても解説したので、参考にしてください。
弊社でも玉掛けを行うような現場仕事を請け負っています。現場仕事を探している人は、見学してみてはいかがでしょうか。玉掛けを実際に行っている場面も見ることができますよ。
興味がある場合は、お問い合せください。